ボクのシアワセ
+++ おまけ +++


<塔矢家での会話>

「あなた、少しよろしいですか?」
珍しく明子が話の口火を切った。
「…ああ」
碁盤を睨む塔矢行洋。
「今日ね、アキラさんのお洋服、汚れてたんですよ」
うきうきとした口調で、行洋に報告する明子。
「ほう」
あまり興味がない様子の行洋。
「ほう、じゃないですよ、あなた。アキラさんのお洋服が草や泥で汚れてるなんて初めてのことです」
「何、アキラが草や泥をつけて帰ったと?!」
衝撃を感じたか、碁盤から初めて視線を話す行洋。
「ええ、ええそうですよあなた…」
感動のあまりか瞳をうるうるさせる明子。
「…明子、それはもう洗濯したのか?」
静かながら声を震わせる行洋。
「…申しわけありません。草の汁の跡が残ってはいけないと思って…」
おずおず返答する明子。
残念そうにコブシを握り締める行洋。
「…そうか…いや、いいんだ、あまりに私たちが特別視するとアキラが気を使ってしまうからな…」
「そうですね、あなた…」
目尻の涙を割烹着の隅で拭う明子。





…襖の向こうには帰宅の挨拶をしようと控えていた緒方と芦原がいちゃったりするんだけどな、これが。

「…緒方さん…アキラって一体…」
「多分それは塔矢門下としては禁句だと思うぞ…」








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